時間感覚をゆっくりにするフォンデュの装置作り

時間感覚をゆっくりにするフォンデュの装置作り

2012年、インスタレーションでスローモーションを体験した。道路にまいた樹脂がチーズフォンデュみたいだったので「フォンデュ」と呼ぶことにした。早すぎる時間感覚をなんとかできるかもしれない気持ちでフォンデュの探求と作品制作を続けた。まわりの人の支えのおかげで、2014年からミラノ、スウェーデン、シンガポール、上海で発表できた。賞をいただいたり美術館で展示したり有名ブランドとコラボのオファーなどがあった。同時にずっともがき続けていたことがある。

それは、早すぎる時間感覚になりがちな現代社会でも、時間感覚をゆっくりにする装置を作ること。

子供の頃の時間感覚は大人に比べるとゆっくりだったので、なにかのきっかけさえあれば子供の頃の時間感覚を取り戻すことはできるはず。そのきっかけになる装置を作りたい。その装置を使って他の人の時間感覚もスローモーションにしたい、スローモーションまでいかなくてもゆっくりにはしたい。 自分が誰かに言葉で伝えるのって風貌も手伝って怪しすぎるから科学的な根拠も必要。根拠とセットで時間感覚をゆっくりにする装置作りを進めた。

科学的な根拠は長くなるのでまた別の機会にまとめる。装置というのは、頭に電極を刺すようなイメージもあるけど、そういうのは脳科学や臨床心理学の分野で、自分の場合はインスタレーションの時のスローモーション体験を再現したい。あらためてスローモーション体験のきっかけを思い出してみると、朽ちた道の上に樹脂が覆いかぶさってできた抽象画のようなものを目の前にしたことだった。

ということは、インスタレーションを抽象絵画のような装置にしてそれを見てもらえばいいのでは!?

まずは単純に道の上に樹脂を撒いた光景をそのまま絵にすることからはじめてみたがダメだった。

インスタレーションをそのまま切り取っても状況も空間も違っているからかも。鑑賞方法もリラックスしつつしゃがんだり俯瞰したり全身を使って集中もしていた。同じような体験を絵画で作り出すには、あの状況を自分なりに再解釈して表現することと、見る側にもリラックスしたり集中したりするなにかが必要だと理解した。