模索し続けること12年

模索し続けること12年

考えていもわからないので、思いついたアイデアはなんでも試すことにした。

例えば腐らないチーズ。

メディウムを新しく開発しようと思い立った。絵の具のようなメディウムとして使うために腐らないチーズを研究した。チーズに添加物を混ぜたり毎日経過観察していると、いったい自分が何を目指しているのかわからなくなった。チーズの匂いで頭がおかしくなりそうだった。完成させたくて続けてたら5年の月日がたっていた。


腐らないチーズの絵画(2022)

5年の研究で好きだったチーズはパッケージを見るだけで気持ち悪くなり、回復までに半年くらいかかった。今、チーズはまた食べられるようになった。ちなみに開発した腐らないチーズは研究所のテストをクリアしていて本当に腐らない。絵画にしてみたが、自分の時間感覚への影響はあまり感じられなかった。今のところ使う機会はないけど、いつかの日かなにかに使いたい。

SNSの更新も忘れフォンデュに取り憑かれたようにいろいろ試した。アクリル画や油絵、左官や陶芸のような手法。顕微鏡で微生物の動きを観察したり、自分でプログラミングしたAIとコラボレーションして絵を描いたりCGや仮想空間で絵を描いたり。森の中を徘徊して素材を集めてみたり、インスピレーションを求めてゲリラ豪雨に打たれて風邪引いたり…etc。

見てもらう人に、いい反応をもらうこともあったけど、時間感覚に影響を与えるまでには至っていなかった。

インスタレーションの時、自然が目の前にあるという空間認識でゆったりした気持ちになって、自然と人工物がせめぎあっている抽象絵画のようなものを見ていると不思議と心が落ち着いた。この自然の感じを自分の、人間の手で表現しようとする以上、どうしても人の手で作った人工物という感じになり、どうやったら自然を感じられるようになるのか、試行錯誤した。

ゴールの見えない模索を続けていると、この方向で進めていってもいいものか迷いはじめた。
そんな時、島根県に帰省して、これや!という素材に出会うことになった。