インスタレーション



スローモーション

インスタレーションとスローモーション

「全部スローモーションになって死ぬかと思った」

中学卒業式の日の朝。学校へ向かう途中、友達が車にひかれたが奇跡的に無傷だった。急いで駆け寄ると、そう答えてくれた。無事で本当によかった。スローモーションってどんな感じか知りたいと思った。それから20年近くたって、路上でインスタレーションをしたら僕も全部がスローモーションになる体験をした。

インスタレーションをした時は東京で一人暮らし。技術の進化が早く、iPhoneを肌見離さず情報収集、グーグルカレンダーに予定が埋まってくると時間に追われる感覚になった。移動中も家に帰ってからもコンテンツをひたすら消費する。気づけば深夜、あっという間に一日が終わっていた。
同じような毎日を繰り返しているうちに、気づけば年末。あっという間に一年が終わっていた。

子供の頃は一年はもっと長かった。歳を重ねるにつれて時間が早く感じるようになった。寿命に向かってけっこうなスピードで走るジェットコースターに乗ってる感覚。このままではなんとなくまずい気がして周りに聞いてみると、そんなの当たり前じゃんという回答。そういうものなのかな。とりあえず現状維持することにした。

2012年5月20日(日)15:00頃、一人で路上インスタレーションをはじめた。東京自由が丘付近の道をキャンバスに見立てて、白っぽい樹脂をまいた。

怪訝そうな顔で通行人が見ていた。白っぽい樹脂が少し朽ちた道の上を少しずつ広がっていった。なんだこれは!?と思ったらスローモーションになった。

スローモーション中は、通行人の表情、風で木の葉っぱが揺れてカサカサいう音、風が自分の体にあたって通り過ぎる感覚、足元にはけっこう蟻がいて、蟻じゃない虫もいる。いろんな感覚の情報のどれに集中するか自分でコントロールできるし、それぞれの情報を同時に感じることもできて、日常生活で感じている時間とは全く違う時間感覚になった。

歳を重ねるにつれて、時間が早く感じる現象をなんとかするのは、今日のインスタレーションにヒントがあるかもしれない!?
早すぎる時間感覚のモヤモヤは一気にふっとんで、自分が求めてたのはこれや!! と、(勘違い?)確信した。

しばらくすると警察が来て、少し離れたところに誘導され職務質問を受けた。周りを見るとインスタレーションを見ている通行人がたくさん集まっていて交通の妨害をしてしまっていたことに気がついた。

平静を装っていたものの、パトカーが増えてきて内心ドキドキしていた。事情を説明したら警察からすぐに片付けてと怒られた。掃除関係の職業の人かな?と思われる速度で片付けを開始。あっ!と気づいた時には時すでに遅し。記録写真を撮っていなかった…。片付けられた残骸をあわてて撮影した。きれいに掃除したら解放してもらえたので、逃げるように自転車でその場から離れた。

自転車での帰り道。
早すぎる時間感覚の何が問題だったのか分かってきた。